アインシュタインの一般相対性理論によれば、質量を持った物体が存在すると、 それだけで時空に歪みができ、さらに物体が運動をすると、この時空の歪みは光速で伝わっていきます。 これが重力波です。重力波の発生源は宇宙の星です。特に代表的なものは「中性子星同士の連星とその合体」や「超新星爆発」です。 このようなイベントが起きた際に生じる重力波の信号が地球に届いた時の信号の大きさは、とても小さいのです。 そこでその信号を捉えるために重力波検出器が開発されました。そして2015年9月14日、アメリカの重力波検出器LIGOがブラックホールの合体から発生する 重力波をとらえることに成功しました。
ここからは重力波を理論的に説明していきます。 重力波を説明するためには、一般相対性理論の知識が必要になります。基礎的な知識は持っていることを前提にこれから 説明していきます。Einsteinは1916年に一般相対性理論を発表し、重力波の理論的な説明を行いました。 それによると時空と物質はEinstein方程式という二階のテンソル方程式を用いて、説明されました。 具体的な形は以下の通りです。 \begin{align*} G_{\mu\nu} = \frac{8 \pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \end{align*} となります。左辺は時空に由来する項で、左辺は物質に由来する項です。 Gは万有引力定数で、$T_{\mu\nu}$はエネルギー運動量テンソルです。仮に時空が真空であれば このエネルギー運動量テンソルは0になります。左辺の$G_{\mu\nu}$はEinsteinテンソルといいます。 具体的な形は以下の通りです。 \begin{equation} G_{\mu\nu} = R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}g_{\mu\nu}R \end{equation} 時空の計量テンソルRはリッチスカラー、$R_{\mu\nu}$はリッチテンソル、$g_{\mu\nu}$は時空の計量テンソルといいます。これらは時空の曲率を表すリーマンテンソル$R^{\alpha}_{\alpha\beta\gamma}$によって定義すことができます。 以下にこれらの定義を示します。 \begin{equation} R_{\mu\nu} = R^{\alpha}_{\mu\alpha\nu}\\ R = R^{u}_{\mu}\\ R^{\varepsilon}_{\sigma\mu\nu} = \partial_{\mu}\Gamma^{\varepsilon}_{\sigma\nu}-\partial_{\nu}\Gamma^{\varepsilon}_{\sigma\mu}+\Gamma^{\delta}_{\sigma\nu}\Gamma^{\varepsilon}_{\delta\mu}-\Gamma^{\delta}_{\sigma\mu}\Gamma^{\varepsilon}_{\delta\nu} \end{equation} リーマンテンソル中に現れる $\Gamma$はクリストフェル記号で、時空のテンソルを用いて次のように定義されます。 \begin{equation} \Gamma^{\varepsilon}_{\mu\nu} = \frac{1}{2}g^{\varepsilon\sigma}(g_{\sigma\nu,\mu}+g_{\sigma\mu,\nu}-g_{\mu\nu,\sigma}) \end{equation} また、ここでは簡単のために偏微分を以下のように省略しています。 \begin{equation} A_{\mu,\nu} := \frac{\partial}{\partial x^{\nu}}A_{\mu} \end{equation} このようにして一般相対性理論からEistein方程式を定義しました。以降はここで定義したことをもとに話を進めていきたいと思います。
Einstein方程式はこのままの形式では解くことはできません。そこで線形化することによって、方程式を簡略化することを考えます。 具体的にはEinstein方程式の一次の摂動を考えることによって、線形化が可能になります。それでは詳しく見ていきたいと思います。 まず、前提として時空に物質が存在しないという条件を課します。するとEinstein方程式の解の1つはミンコフスキー時空になります。つまり計量テンソルを定義しなおすことができます。 これを以下にしまします。 \begin{equation} g_{\mu\nu} = \eta_{\mu\nu} \end{equation} また、Einsteinテンソルは0になります。つまり、真空中の時空は曲率を持たない平坦なものになることがわかります。 この計量テンソルに一次の摂動$h_{\mu\nu}$が加わったとしてEinstein方程式を一次の摂動の範囲で書き下すと以下のようになります。 \begin{equation} G_{\nu\lambda} = \frac{\varepsilon}{2}[h^{\delta}_{\lambda,\nu\delta}+h^{\delta}_{\nu,\lambda\delta}-\Box h_{\mu\lambda}-h_{,\nu\lambda}-\eta_{\nu\lambda}(h^{\delta\sigma}_{,\delta\sigma}-\Box h)] \end{equation} 次に以下のようなゲージ変換(一種の座標変換)を行います。 \begin{equation} x^{'\mu} = x^{\mu}+\xi^{u}(x) \end{equation} そしてゲージ変換の項$\xi^{u}$を波動方程式満たすように選べば、ゲージ変換後の計量テンソルは常に0となり、調和条件を満たすことができます。 このような調和条件下ではEinsteinテンソルは一次の摂動の範囲で次のように書けます。 \begin{equation} G_{\mu\nu} = -\frac{1}{2}\Box h_{\mu\nu} \end{equation} よって摂動の一次の範囲内ではEinstein方程式は \begin{equation} \Box h_{\mu\nu} = -\frac{16\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} ただし h^{\mu}_{\nu,\mu} = 0 \end{equation} となり、特に真空中では波動方程式になります。 \begin{equation} \Box h_{\mu\nu} = 0 ただし h^{\mu}_{\nu,\mu}=0 \end{equation} この方程式を解くことによって一次の摂動での重力波を求めることができます。